東京高等裁判所 昭和38年(う)829号 判決
被告人 吉田己代治
〔抄 録〕
所論は、原判決が警察官作成の交通違反現認報告書(記録第二二丁)を刑事訴訟法第三二一条第三項の検証調書として証拠に採用したのは違法である旨の主張である。
しかし、原判決が所論右現認報告書を証拠として採用していないことも、その判文にてらし明らかであるから、この点についての所論は、その前提において誤がある。ただ、原判決は、所論とは異なり司法警察員木村公三らの作成にかかる実況見分書にてん付されている自記式速度測定器の測定テープを証拠として掲げているだけである。そして、当裁判所は、被告人の指印がある自記式速度測定器による換算表が添付されている取締り勤務者、すなわち、取調者巡査部長木村公三ほか四名の司法巡査の記名押印がなされている「見分した実況と略図」と題する書面は(記録第二三丁、なお、この書面は、当審証人木村公三の法廷外の供述により真正に作成されたものと認める。)、自記式速度測定器により当該車輛の進行速度を測定して作成されたものであることが、その記載自体により明らかであるばかりでなく、当審証人木村公三に対する尋問調書、原審第三回公判調書中証人服部満、同木村公三の各供述記載の一部によれば、右取締り勤務者は、昼間本件の交通取締りを行うに際し、何ら機械に故障のなかつた右測定器のボタンを誤つて押すというようなことはなかつたことが窺知されるから、かかる書面は、たとえ被告人側において、これを証拠とすることに同意しなくても、検証調書について刑事訴訟法第三二一条第三項に規定するところと同一の条件の下に、これを証拠とすることができるものと解するのを相当とする(昭和三六年(あ)第一四九号同年五月二六日最高裁判所第二小法廷判決、刑集一五巻五号八九三頁、昭和三五年(あ)第八八七号同年九月八日同裁判所第一小法廷判決、刑集一四巻一一号一四三七頁各参照)。以上のとおり、原判決には、所論のごとき違法はないから、論旨は理由がない。
(小林健 遠藤 吉川)